「人として正しいことを貫くこと」
を信念に、中堅・中小企業から
1,000億円企業まで、投資先の真の
成長を支援する日本産業推進機構

株式会社日本産業推進機構
代表取締役社長
津坂 純 氏
近年、事業承継案件を中心に、幅広い投資テーマ・規模の案件に積極的に投資しているバイアウトファンドに日本産業推進機構(東京都港区。以下「NSSK」。)がある。
日本の産業の活性化のため、全国の地銀等とも連携して投資を実行し、独自の商標付きバリューアップ・プログラムである「NVP®」で投資先の持続的な成長を支援し、ESGにも徹底的にコミットしつつ高いリターンを上げ、その結果、数々の賞も受賞している。
世界的なファンドの日本代表から転じてNSSKを設立し、昨年(2024年)創業10年を迎えられた津坂社長に、創業の経緯や理念、地銀等との取り組み、経営支援の手法、ESGへの思い等について伺った。
金融、事業、グローバルの知見を得て
日本のためにファンド事業に挑んだ
――津坂さんが、バイアウト投資の業界に入った経緯、そしてTPGキャピタルの日本代表を経て、独立してNSSKを立ち上げた経緯について教えてください。
バイアウト事業は究極に言えば金融と事業のマネジメントのハイブリッドで、好奇心と起業家マインドを持つ性格には一番向いている職業だと思います。米国のゴールドマン・サックス証券でM&Aを学び、その後は、1兆円の時価総額を誇るミリコム・インターナショナル・セルラーという世界の発展途上国で携帯電話サービスを提供する会社の取締役副社長を務め、アメリカに本社がある保険・金融関係のグローバル企業で社長、会長に就任して、事業会社の経営幹部の経験とグローバルな知見を得て、ファンド事業に本格的に挑むこととなりました。
日本にも貢献する責務を感じて帰国する決断に至り、TPGキャピタルという世界5本の指に入る投資ファンドを基盤とする会社にパートナーとして入りました。日本発のバイアウト投資会社を立ち上げるのは時間の問題だけであって、2014年には円満退職ができ、TPGで組成したコアチームと、日本企業の推進を支援する日本産業推進機構を設立する運びとなりました。
――バイアウトファンド運営会社は、カタカナの社名のところが多い中で、「日本産業推進機構」という社名に込めた想いがあれば教えてください。
私はNSSK設立前、グローバルファンドで、グローバルに通用する投資手法、業務改善の方法などのベストプラクティスや世界の投資家の見方といった知見を蓄積しました。それらをより多くの機会で活かすべく、2014年に当時の仲間と一緒にNSSKを設立しました。「日本のために仕事がしたい」、「我々のお手伝いによって日本のグッド・カンパニーをグレート・カンパニーへ導きたい」という想いに、「日本の産業を活性化させる」という意味を込めて、僭越ですが「日本産業推進機構」という名前を付けました。
――2014年にNSSKを設立された際、当時既に先行して日本企業に投資しているバイアウトファンドがいくつもある中で、後発として、どのような独自性を打ち出して、競争優位性を出そうとしたのですか。
2014年にNSSKを設立した当時、日本のバイアウト市場にはすでに多くのファンドが存在していました。その中で私たちは、「単なる資本提供者ではなく、企業の成長を本質的に支援できる投資家であること」をコンセプトに掲げ、独自性を打ち出しました。
具体的には、中堅・中小企業のバリューアップに特化した点が大きな特徴です。当時、大手ファンドは比較的大型案件に注力しており、日本全国に存在する優れた中堅・中小企業の潜在力が十分に引き出されていないと感じました。これらの企業に対し、経営の強化や成長戦略の策定、成長投資の実行まで支援することで、企業価値を大きく向上させることができると考えました。
また、私たちの大きな強みの一つがNVP®(NSSKバリューアップ・プログラム)です。国内外のエクセレント・カンパニーのノウハウを体系化した経営支援パッケージNVP®を提供し、高度な専門人材によって構成されるNVP®実行支援チームを中心に持続的な成長を支援しています。この企業価値向上の手法については、商標までいただく拘りのある仕組みとしてご評価いただきました。
さらに、経営への深い関与を徹底し、経営者の方々と対話を重ねながら、企業の本質的な成長を支援する姿勢を貫いています。私たちはオーナー経営者の方々と同じ目線で議論し、短期的なリターンだけでなく、企業が長期的に発展できるよう伴走することを重視しています。このアプローチは、日本のオーナー企業の皆さまから高く評価され、信頼関係の構築につながっていると感じています。
また、日本市場に特化しつつも、グローバルなネットワークを活用することで、日本企業のさらなる成長機会を創出しています。加えて、当初からESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを経営の根幹に据え、企業が持続可能な形で発展できるよう支援している点も、他のファンドとの差別化要因となっています。
このような取り組みを通じて、NSSKは「投資先企業の真の成長を支援するパートナー」としてのポジションを確立し、後発ながらも市場で強い競争優位性を築くことができました。

様々な規模、ニーズに対応できるよう
柔軟な投資アプローチを採用
――津坂さんは、京セラ創業者の故稲盛和夫氏の経営塾である盛和会に入られているとのことです。また貴社のミッションを拝見すると、稲盛氏の影響を大きく受けられているように感じます。
ご指摘の通り、NSSKのミッションもそうですが行動指針含め、盛和塾の教えの影響は多大なものです。盛和塾の世界大会での指導から個別の会議での意見交換の場は、今考えますと私の人生にとって不可欠なものです。何回も読み直す、観直す、聞き直す教えは宝物です。今の私には迷いはまったくなく、すべての判断は「人として正しいことを貫くこと」に専念しているからだと思います。周りの人たちの物心両面の幸せを追求するジャーニーです。これを実行するには誰よりも努力して常に前向きに生きて行くことです。
――LP出資者はどのような属性のところですか。
NSSKのLP出資者は、多様なバックグラウンドを持つ機関投資家の皆さまから構成されています。主に、日本国内外の年金基金、金融機関、大学基金、ファミリーオフィス、政府系機関といった、長期的な視点で資産運用を行う投資家の方々が中心です。割合でいいますと、国内外問わず政府系の年金基金が多いです。日本ですと国民年金、金融機関、海外ですとシンガポールの政府基金やカナダの医療従事者向けの年金基金等が挙げられます。日本のミドルマーケットの領域に投資をされたい機関投資家が多いです。
――投資テーマとしては事業承継、カーブアウト、TOBによる非上場化から再生案件まで、そして企業価値では数十億円から1,000億円規模(2023年投資のクラフト及びタカギ)まで、このように幅広く投資しているファンドは珍しいと思われます。かなり柔軟なファンド設計になっているのですか。1,000億円規模の場合は共同投資家との投資になるのですか。
おっしゃるとおり、NSSKは非常に柔軟な投資アプローチを採用しています。設立当初から、日本の中堅・中小企業の成長を支援することを基本理念としつつ、市場環境や企業のニーズに応じて、最適な投資を実行できるようにファンドの設計を行っています。その結果、事業承継やカーブアウトだけでなく、TOBによる非上場化や再生案件まで、幅広い投資機会に対応できるようになっています。
企業価値のレンジについては、数十億円規模の中堅企業から、1,000億円規模の案件までカバーできるようにしています。1,000億円規模の案件など、案件の特性や資本構成によっては、共同投資のスキームを活用しています。戦略的パートナーや金融機関、機関投資家との共同投資を行うことで、資本の効率的な活用だけでなく、より高度なバリューアップ施策を実行することが可能になります。
――介護、調剤薬局、日本語学校など規制業種の企業に比較的多く投資されています。規制業種は、政府の方針に経営が左右されるためリスクが高いという考え方もあるかと思いますが、貴社では規制業種をどのようにとらえていますか。
確かに、介護、調剤薬局、日本語学校といった規制業種は、政府の方針や制度変更の影響を受けやすい側面があります。しかし、私たちは規制業種だからこそ、長期的な成長が期待できる分野も多いと考えています。
まず、規制業種は基本的に社会的ニーズが高く、政策的に支援される傾向があるという点が重要です。例えば、介護業界は高齢化が進む日本において、今後も長期的な成長が見込まれる分野です。同様に、日本語学校は外国人労働者の受け入れ拡大といった国の方針と密接に関係しており、政府の施策によって市場の成長が後押しされる可能性があります。規制があるからこそ、一定の安定した需要が存在し、市場の乱高下が起こりにくいというメリットもあります。
――稲盛氏の言葉の中に「値決めは経営である」があります。規制業種では自由に価格設定できないことが多いと思いますが、その点についてはいかがですか。
「値決めは経営である」という視点についてですが、確かに規制業種では自由な価格設定が難しいケースが多いです。しかし、その中でも私たちは経営の工夫次第で収益性を向上させる余地が十分にあると考えています。加えて、規制業種の企業は、業界特有のノウハウや運営力が競争優位性につながるため、これまで培ってきた投資ノウハウを活かすことで、投資先企業の持続的な成長を支援できています。
私たちは規制業種を「リスク」ではなく、「持続的な需要が見込まれる成長分野」としてとらえており、適切な経営改善策を講じることで、安定したリターンを生み出せると考えています。

投資先で実践し体系化してきた
NVP®で投資先を徹底的に支援する
――投資先企業に対する独自の経営支援パッケージであるNVP®の特徴や他のファンドが行う経営支援との違いについて教えてください。
NSSKの独自の経営支援パッケージであるNVP®は、投資先企業の業務改善や人材教育、財務効率の向上などを包括的に支援するプログラムです。このプログラムは、エクセレント・カンパニーが実践しているノウハウを、これまでの投資先で実践し、国内企業の実態に合わせて体系化したものであり、NVP®実行支援チームが中心となって展開しています。NVP®の特徴は、経営指標の整理やモニタリング、会計・財務の「見える化」、経営指標の目標設定、ESGやコンプライアンス、ガバナンス体制の構築など、多岐にわたる経営管理手法の導入を支援する点にあります。
また、NSSKは投資先企業の経営陣と密接に連携し、業務プロセスの改善や営業戦略の強化、コスト構造の最適化、IT導入、組織改革など、実務レベルでの支援を行っています。これにより、投資先企業の現場レベルでの変革を推進し、持続的な成長と企業価値の向上を実現しています。
――多くの地銀等の地域金融機関と提携していると聞いています。地銀等との取り組みを詳しく教えてください。
地方銀行とはLP出資・案件におけるローン組成・案件ソーシング等で幅広く連携をしています。我々は、約40行の地方銀行からLP出資を受けており、さらに50行以上からローン提供を受けております。地方銀行には、取引先企業からの事業承継系のお悩みが多数寄せられるため、案件ソーシングでも連携をさせていただいております。
私たちの投資対象のレンジは非常に幅広く、10億円、20億円の案件から1,000億円を超える案件まで手掛けますが、まさに、この10億円、20億円の案件が地域のエコシステムから創出される案件であり、そういった案件も非常に重視しています。例えば、コロナウイルスの蔓延、為替変動、金利の急激な変化等、嵐が来ると困ってしまうのは従業員の皆さんです。ロールアップで中小案件に投資していくことで、従業員の皆さんもそれなりに強い基盤を持ったところに来ていただくことができます。このように地域の従業員を守る、スケール効果を図っていくといった姿勢は、地域金融機関から評価されている部分だと思います。
また、地方銀行にとっても、BSを有効活用することや貸出金利息等以外の非アセット収益を拡大することが求められる中、LBOへの取り組みの重要性は増しており、NSSKとの連携の価値が増していると理解しております。
さらに、我々は、地銀研修会を開催し、地銀の皆さまに我々の投資の取り組み方のノウハウをお伝えしています。これにより、NSSKと地方銀行の関係性がさらに深まると考えています。
――中部・北陸8県の中小企業に限定して投資する中部北陸地域活性化投資事業有限責任組合(中部北陸ファンド)を2016年に運用開始されています。現在、本ファンドの運用状況はいかがですか。
2016年の運用開始以来、地域の優良企業に対して積極的な投資を行い、事業承継や成長支援を通じて、企業価値の向上に貢献してきました。
現在、本ファンドは順調に運用されており、複数の投資案件で企業の成長や経営改善を実現しています。特に、事業承継に課題を抱える中小企業への支援や、地元の雇用創出に貢献する案件が多く、地域経済の活性化にも寄与しています。この取り組みも地域の金融機関と日本国のサポート(REVIC等)があったからこそ成功できたと思います。感謝の気持ちしかないです。

「αを創出するESG」を標榜し
信念をもってESGに取り組む
――国連が支援する「責任投資原則(PRI)」への署名及び世界銀行グループの国際金融公社が策定する「インパクト投資の運用原則(Operating Principles for Impact Management)」への署名を行われており、また近年は定期的に「NSSK ESG Report」も出されており、ESGに対する並々ならぬ情熱を感じますが、その背景にはどのような経験や思いがあるのですか。
NSSKの投資哲学において、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みは単なるリスク管理ではなく、企業価値向上の重要な要素と位置付けています。その考えの根底には、私自身の経験と、日本の中堅・中小企業の持続的な成長を支援したいという強い思いがあります。
私たちは、投資を通じて単に財務リターンを追求するのではなく、企業が長期的に発展し、社会に貢献できる存在へと進化することを目指しています。特に、日本の中堅・中小企業は、地域経済や雇用の中核を担っており、持続可能な経営基盤を構築することが不可欠です。そのため、ESGの視点を経営に組み込むことで、ガバナンス強化や環境負荷の低減、従業員の働きがい向上など、多方面での価値創造を推進しています。
私たちは、「α(超過リターン)を創出するESG」を標榜し、企業価値に繋がるESGに取り組んでいます。例えば、電気をLEDに変えるだけでも、コストも下がりますし、環境を守ることにも繋がります。会社の業績、環境維持の両面に資するものであり、小さなことではありますが、このようなことも大切にしていきたいと考えています。
また、私自身、過去に多くの企業経営者と接する中で、社会的責任を果たしながら成長する企業こそが、長期的に競争力を持ち続けることを実感してきました。そのため、国際基準である「責任投資原則(PRI)」や「インパクト投資の運用原則」への署名を通じて、NSSKとしてのコミットメントを明確にし、投資先企業にも積極的にESGの取り組みを促進しています。
「NSSK ESG Report」もその一環であり、私たちの投資活動が企業の持続可能な成長と社会的インパクトの向上にどのように寄与しているかを可視化することを目的としています。今後も、単なる投資家としてではなく、企業とともに社会的価値を創出するパートナーとして、ESGの推進に尽力していきたいと考えています。昨今、ESG推進に逆行する風潮もありますが、私たちは信念をもってESGに取り組んでおり、投資家からESGは重要じゃないと言われても、譲るつもりはありません。
――ESGの課題は投資先企業により様々だと考えられますが、各企業に共通して特に重視しているESGの項目はありますか。
ESG 促進の観点ではWomen Empowerment に着目しています。これまで経済的・家庭的に離脱せざるを得なかった優秀な女性管理職・従業員の雇用促進にもサポーティブな立場をとっています。少子化で日本の労働人口が減っていると思われがちですが、実は増えているのが現状です。女性がこの10年間で労働人口の中に大きく加わるようになったということです。加わったから満足するわけではなく、その方々をエンパワーしていくことが重要です。管理職、支店長、部長、社長等の役職にチャレンジしていただくことです。
これによって企業業績の向上にも繋がりますし、企業業績が向上すれば投資にも繋がってきます。私たちが推進するESGはαを創出するからこそ推進し続けていくべきだと信じています。
実際に、エグジット済企業の平均リターンは4 倍を超え、リターン源泉の半分以上は売上・EBITDA 成長によるものであり、私達が「卒業」と呼んでいるエグジット後にも企業が自走して日本社会に貢献し続ける企業の創出を目指しています。
――Private Equity International 誌が主催する Private Equity International Awardsにおいて、PEI Firm of the Year in Japanを2017年、2018年、2020年、2022年、2023年と受賞する等多くの賞を受賞されています。どのようなことが評価されて受賞したとお考えですか。
この10年間、皆さまのおかげで、事業承継投資のリーダーとしての確固たる地位を確立したと自負しております。その他様々な業種における投資実績や、日本およびアジアにおけるESGリーダーシップの確立、地域金融機関との共存共栄を企図した取り組みなど、数々の成果を上げることができました。これらが評価され、素晴らしい賞を受賞させていただくことができたと考えております。

日本発の投資会社として
グローバルでもプレゼンスを発揮したい
――現在、アジアへの投資資金は中国から日本にシフトしてきており、多くのグローバルな投資家が、日本のバイアウト市場に注目しています。日本のバイアウト投資市場の魅力はどこにありますか。
まず、企業ガバナンス改革が引き続き重要な役割を果たしている点が挙げられます。過去10 年間にわたる企業ガバナンス改革は、企業の透明性と効率性を向上させ、投資家の信頼を高めています。特に、東京証券取引所の改革や上場企業に対する資本効率の向上要求が、企業のガバナンスを改善し、投資家の信頼を高めています。
また、労働市場の改善も重要な要因です。2025 年には労働市場の改善により賃金が上昇し、個人消費が増加することが期待され、企業の収益性向上への貢献や株式市場のパフォーマンス底支えが期待されます。
加えて、デジタル化と技術革新の推進、AI 化促進も市場成長をサポートするものと考えられます。デジタル化と技術革新に対する需要は日々高まっており、資本投下ニーズも増加傾向にあります。これにより企業の競争力が向上し、長期的な成長が期待されます。
さらに、我々のようなバイアウトファンド、すなわちプライベートエクイティ市場の活性化が後押しすると考えられます。日本の中小企業の社会的構造に基づく中長期的な事業承継ニーズの増加や、昨今の上場企業に対するアクティビストファンドの株式取得・提言からの逃避先としての非公開化ニーズ、ノンコア事業のカーブアウトニーズの増加を背景に、日本のPE 市場は活発化しており、これが企業価値の向上とM&A の底支えになっているものと考えられます。
これらの内部要因が相まって、日本の金融市場は2025 年も引き続き強気の勢いを維持することが期待されます。
――奥さま(日本マイクロソフト社長の津坂美樹氏)とビジネスやAIについて議論されることはあるのですか。
妻からは、私とは絶対仕事はできないといつも言われてますが(笑!)、ビジネスやAIについてよく話し合います。NVP®でAI活用を推進すべく動いておりますが、その背景にも妻からの助言があります。現在、ITパートナーと組んで領域別のAIツールを作っているところです。将来的には、投資先にAIツールを導入し、企業活動の様々な分野における生産性向上をサポートしたいと思っています。
我々の価値観は同じですが思考回路がいい意味で異なり、相談すると新たな発想と必ず最適な決断又は鮮明な道が見えて来ます。正直小生がいつも教えてもらっている立場ですが!
――昨年(2024年)貴社は設立10年を迎えられましたが、今後の10年でどのような会社になることを目指していますか。
グローバルでもプレゼンスを発揮する日本発の投資会社としての地位を確立していきたいと考えています。例えば、私たちが投資した日本のグッド・カンパニーが海外のグッド・カンパニーを買収していくということです。「強いアメリカ」は今後も続いていくと思いますので、私たちが投資先を支援してグローバルでもプレゼンスを発揮するには、やはりアメリカでそれなりのプレゼンスがある会社を買収しなければならないと思います。そして、日本のグッド・カンパニーの考え方も理解してもらい、「日本化」していくということです。その上で、グローバル化した投資先を日本の企業に引き継ぐという流れを作っていければと考えています。
これまでの10年間では、数多くの投資案件を実行し、順調にファンドサイズが大きくなっており、この先も更に大きくなると思いますが、これまで培ってきた関係性やノウハウが我々の大きな武器となると考えております。地域金融機関との関係性やロールアップノウハウ等はより大規模な案件においても非常に有用です。少しずつ投資活動の幅を広げながら従業員一同チャレンジを楽しんでいきます。
また、私たちはこれまでの10年間、「人として正しいことを貫くこと」を理念として、投資活動を続けてきました。何か判断に迷うことがあっても、「人として正しいこと」は何かという問いを立てれば、自ずと答えを導き、即断即決で物事を前に進めることができました。この先の10年間も変わらず、「人として正しいこと」をやって参ります。
――最後に、貴社の投資対象となりうる企業のオーナーに対して、メッセージがあればお願いします。
我々は、日本企業は非常に大きな価値を有していると考えています。NSSKは、単なる投資家ではなく、価値ある企業と共に、より素晴らしい企業へと成長させるパートナーです。オーナーの皆さまが大切に育ててきた会社の価値をさらに高め、次のステージへ導くお手伝いをしたいと思っています。もし、事業の拡大、新たな成長フェーズへの移行、事業承継の検討をされている企業オーナーの方がいらっしゃれば、ぜひ私たちと対話の機会を持っていただきたいと考えています!
(インタビュー日時:2025年3月5日)

株式会社日本産業推進機構
代表取締役社長
津坂 純(つさか じゅん)
1961年東京生まれ。フィリピンのアメリカンスクールからハーバード大学経済学部に進学し、1983年に卒業後、メリルリンチのバンカーになる。
その後、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得し、ゴールドマン・サックスのM&A部門、複数の外資系グローバル企業での経営幹部を経て、TPGキャピタルの日本代表を務める。
2014年に日本産業推進機構を設立。
日本ハーバード・クラブのプレジデント、経済同友会会員、盛和塾生